シンガポールのインターナショナルスクールを探していると、よく目にする名前があります。
XCL World Academy。
以前の名称や学校情報を調べると、「XCL American Academy」という別の学校名も出てくるため、
「インターナショナルとアメリカンは別の学校なの?」
「IB校なのか、アメリカンスクールなのか分からない」
と戸惑う保護者も少なくないでしょう。
その疑問をひもとくには、まずXCLがたどってきた変化を知る必要があります。
XCLのキャンパスには、以前、特色の異なる2つの学校がありました。
一つは、IB教育を軸とするXCL World Academy。
もう一つは、アメリカ式カリキュラムを採用していたXCL American Academyです。
ところが2025年8月、この2校は統合されました。現在は、XCL World Academyという一つの学校として運営されています。
したがって、2026年現在の正確な理解は、
「インターナショナル校とアメリカン校の2校がある」
ではなく、
「IBを中心とする一つのインターナショナルスクールの中に、アメリカ式の進路選択も残されている」
となります。
学校の看板は一つになりましたが、教育の引き出しはむしろ増えています。
現在のXCL World Academyは、幼児期から高校まで学べるIB校です。
公式サイトでは、Primary Years Programme、Middle Years Programme、Diploma Programmeを提供する、シンガポールでも数少ないIB一貫校として紹介されています。対象年齢はNurseryからGrade 12までで、幼児期から大学進学前まで同じ教育理念のもとで学べます。
IB教育の特徴は、知識を一方的に覚えることではありません。
子どもたちは、
「なぜそうなるのか」
「別の考え方はないか」
「学んだことを現実社会でどう使うか」
を繰り返し考えます。
教師が答えを配るのではなく、子ども自身が問いを立て、調査し、考え、発表する。
XCLの教育も、基本的にはこの探究型の学びを土台にしています。
XCL World Academyの大きな特徴は、IB校でありながら、Grade 11とGrade 12の進路が一つではないことです。
高校生は、目標や学力、得意分野に応じて、
などを組み合わせた進路を検討できます。
これは、すべての生徒を同じ型に入れないための仕組みです。
IBディプロマは世界的に評価の高い資格ですが、学習量が多く、幅広い科目を履修する必要があります。
一方で、特定の教科を深く学びたい生徒や、アメリカの大学制度との親和性を重視する生徒には、APやHigh School Diplomaが合う場合もあります。
つまりXCLは、
IBかアメリカンかを学校側が決めるのではなく、生徒の将来に合わせて選択できる学校
へと変化しているのです。
公式サイトを読み進めると、何度も登場する言葉があります。
それが、
Future Ready
です。
直訳すれば「未来への準備ができている」という意味ですが、単にパソコンを使えることではありません。
XCLが掲げる未来への準備には、
などが含まれています。
ここが、伝統的な名門校とは少し違うところです。
歴史ある教育を守るというよりも、社会の変化を見ながら、学校自体も動き続けています。
生成AIが急速に広がるなか、多くの学校は対応に迷っています。
宿題に使ってはいけない。
文章作成に使うのは禁止。
そんなルールを設ける学校もあります。
一方、XCLはAIを学校の外へ追い出すのではなく、どう仕組みを理解し、責任を持って使うかを教えようとしています。
公式サイトによると、KG2からGrade 7までを対象とした構造的なAIリテラシープログラムがあり、生徒はAIの基礎を学び、実際のアプリケーション制作にも取り組みます。また、Grade 6・7ではAIとロボティクスがIBのMYPカリキュラムに組み込まれています。
AIに答えを書かせるだけではありません。
AIはどこから情報を得るのか。
その答えには偏りがないか。
個人情報を入力してよいのか。
人間が判断すべき部分はどこなのか。
こうした問いを、年齢に合わせて考えます。
AIを魔法の箱ではなく、理解して扱う道具に変える教育です。
XCLでは、KG2からGrade 5を対象にした独自プログラム「XCLerate」も展開されています。
このプログラムでは、未来に必要となるスキルを通常の学習と切り離さず、日々の授業の中に組み込んでいます。
子どもたちは、単に端末を操作するだけではありません。
身近な問題を発見し、
アイデアを考え、
試作品をつくり、
うまくいかなければ修正し、
人に説明する。
いわば、小さな研究者、デザイナー、起業家として学びます。
「正解を早く出す子」ではなく、
正解のない問題に粘り強く取り組める子
を育てようとしているのです。
XCL World Academyは、シンガポール北部のYishunにあります。
公式情報では、約5ヘクタールのキャンパスに、NurseryからGrade 12までの生徒が学んでいます。新しいEarly & Primary Years施設も開設され、幼児期から11歳頃までの学習環境が拡充されました。
幼い兄弟と高校生の兄弟が、同じ学校に通える。
学年が上がるたびに学校を探し直す必要がない。
これは、海外転勤や移住を伴う家庭にとって大きな安心材料です。
また、幼児期からIB型の探究学習に慣れることで、高校になって突然「自分で考えなさい」と言われるのではなく、問いを立てる習慣を少しずつ育てることができます。
XCL World Academyには、多国籍の家庭が集まっています。
公式サイトでは、50を超える国籍の家庭が学校を選んでいると紹介されています。
インターナショナルスクールという名前でも、実際には特定の国籍が多数を占める学校があります。
一方、XCLは多様な文化背景を持つ家庭が集まる学校として、自らを位置づけています。
英語の発音も一つではありません。
家庭で話す言語も、宗教も、食文化も異なります。
子どもたちは、違いを特別授業で学ぶのではなく、毎日の教室で経験します。
UWCSEAの記事を読んだ後では、
「XCLも入学が非常に難しい学校なのでは」
と思うかもしれません。
しかし、学校の性格は少し異なります。
XCL World Academyはローリングアドミッションを採用しており、空席があれば年度途中からでも入学できる仕組みです。Grade 2からGrade 12の出願者には、学習特性や潜在的な能力を把握するためのCAT4が求められます。また、必要に応じて英語力評価や家族面談も行われます。
したがって、誰でも無条件で入れるわけではありません。
ただし、完成された英語力や完璧な成績を持つ子どもだけを集めるというより、
現在の力を確認し、どのような支援があれば成長できるかを見る学校
という印象が強いのです。
XCLの公式サイトには、日本からシンガポールへ移る家庭のための案内や、日本人保護者の体験談が複数掲載されています。
日本語を母語として維持するためのJapanese Home Language Programmeに加え、英語力に応じたEAL、さらにGrade 6からGrade 9を対象とするFoundational English Programmeも用意されています。
これは、日本人家庭にとって非常に重要です。
英語がまだ十分でないから、インターナショナルスクールは無理。
日本語を忘れてしまいそうだから不安。
そうした二つの心配に、学校として対応しようとしているからです。
次回は、日本人家庭が最も気になる部分を深掘りします。
特に、通常のEALとFoundational English Programmeは何が違うのか、日本語授業はどの学年でどのように行われるのか、公式サイトを細かく読み解いていきます。
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