
環境教育の先駆けとして知られるグリーンスクールは「未来をよりよい世界にしたい」そんな希望を持った子どもたちが目指す学校。幼稚園から高校までのクラスがあり、世界中から集まった子どもたちが学んでいます。
また、見学者もさまざまな国から毎日のように訪れ、入学希望者が殺到する人気校です。
グリーンスクールが開校した当初、沢山のメディアが取材に訪れ、先進的な学校のコンセプトに共感した海外の有名な投資家が次々と寄付をしたことも大きな話題になりました。
それから15年が経過しましたが、バリ島のグリーンスクールで学んだ生徒たちの活躍はめざましく、バリ島だけではなくニュージーランド、南アフリカにも校舎を増やしています。2026年にはメキシコにも開校予定です。
グリーンスクールは、2009年にジュエリービジネスを大成功させたカナダ人のジョン・ハーディー氏が創設した私立学校です。
創始者ジョン・ハーディ氏がグリーンスクールをスタートさせた想いを語った「TED TALK」は話題になりました。
https://www.youtube.com/watch?v=HD4bpztESWw
グリーンスクールは、インドネシア・バリ島のウブドにあります。
このエリアはバリ島の中央に位置する高地で、古代の聖地だった場所です。神聖な川が流れ、伝統的なアートや舞踊の中心地として知られています。
ウブドの中心から車で約20分の、ユネスコに守られている熱帯雨林や、ヒンドゥー教の寺院が点在する豊かな環境の中にグリーンスクールはあります。

校舎。グリーンスクールの見学のために、イタリアからやってきたという保護者も
私がグリーンスクール・バリの見学をした日も、親子で参加している人たちがいました。
その日集まったのは約20人。ツアーの最初に参加者が自己紹介をしたのですが、ヨーロッパ・アジア・アメリカなど世界各国からグリーンスクールに興味を持つ人々が遠路はるばる集まってきていました。
中には、教員や教育関係の仕事に従事している人たちもいました。グリーンスクールの授業内容や、カリキュラムに興味があって参加をしているとのこと。
日本から参加していた小学生とママの親子は「親としてはぜひグリーンスクールで学んでほしいけれど、我が子が実際にこの学校を見て、行きたいと思うかどうかを知りたかったので、一緒に連れてきました」と話してくれました。
校内を歩いていると、在校生が通り過ぎるたびに「こんにちは」と挨拶してくれます。話しかけてみると、いろいろな国から生徒が集まっているのがわかりました。また、親も一緒にバリ島に移住している家族が多いことから、敷地内で生徒の母親や父親ともすれちがいました。
現在、40カ国以上の国籍の家族が集まり、スクールコミュニティがあるそうです。
学校の敷地は広大。見学の際には、歩きやすい靴がおすすめです。

Pak Salさん:
グリーンスクールの学習プログラムは、魔法のように素晴らしいと感じることがあります。
起業家的でエコでハイテク。 私たちは未来の教育モデルを生み出したと思っています 。グリーンスクールの3本の柱は、「環境」「コミュニティ」「学習プログラム」です。
学習環境は大変ユニークです。敷地内には、竹林、田んぼ、川があります。壁のない竹の教室は、風景に溶け込むように建てられています。私たちは、自然が私たちの最も大事な教師だと考えており、環境から多くのことを学びます。
グリーンスクールでは、環境を守るための活動を重視していますが、学校外のコミュニティの支援や相互理解がなければ、真のサステナビリティは実現できないことも理解しています。コミュニケーション力やコラボレーション力、適応力、システム思考などは特に重視しているスキルの一部です


また、生徒がグリーンスクールに入学すると、保護者の方々にもプロジェクトに参加していただくことになります。マングローブ保護区に苗を植えたり、菜園の野菜を買ったり、恵まれない地域の人たちに料理をつくったりといった活動をお願いしています。
上下の関係はなく、グリーンスクールに関わっている全員が教師であり、全員が学習者となります。
私たちの学習プログラムは、環境活動を体験全体に組み込むように設計されています。教育により世界をよりよい場所にすることを目指しています。
グリーンスクールは、国際的な認定を受けたアカデミック・プログラムも設けているので、多くの卒業生は希望の大学へ進学しています。 私たちは、生徒一人ひとりが自分の未来に可能性を持っていると信じています。
たとえば、気候変動対策を奨励する世界的な運動を始める生徒がいるかもしれませんし、地域社会で環境活動に携わる一員になる人もいるかもしれません。大学へ進学する学生、1年間ヨットで航海する学生、有機農場でボランティア活動をする学生、起業する学生など、さまざまな学生がいます。
どのような方向へ進んでも、私たちは全力でサポートし、心から応援しています。
多くの生徒たちは、グリーンスクール在学中に活動を始め、それぞれ将来の目標を持っています。経験、スキル、単位、ポートフォリオ、そしてリーダーとしての情熱など、たくさんの力を携えて卒業していきます。

Pak Salさんと生徒のシイ(ショーン)・マキノさん
シイ(ショーン)・マキノさん:
グリーンスクールでは、サステナブルな社会やSDGsなど、環境に関するテーマを重視していますが、そればかりではありません。ここでは、自分の専門分野を掘り下げ、従来の学校にはない斬新な出会いを経験することができます。さらに、新しい視点で物事をとらえる力も養われます。強い意志があれば、何事にも邪魔されることなく学びに集中することができます。
私は、コンピュータサイエンス、特に人工知能と機械学習に注力しているので、この分野の発展に貢献したいと思っています。まだ具体的なことは言えませんが、自分の専門性とグリーンスクールで学んだことを結びつけて、地球によい影響を与えるリーダーになることを目指しています。
しかし、どの学校であっても、自分から行動することが必要です。ただ受け身で情報を吸収するだけでは、自分の個性や価値を確立することはできません。自分を深く理解し、人生のコンセプトを設定することが重要です。その上で、この学校に何を求めているのか、深く考えてから入学することを強くお勧めします。

アクティビティボード。yogaや自転車、カポエイラも。トロピカルプラントベースのクッキングクラス!楽しそうです。
事前にネットで申し込みをすると、スクールツアーに参加をすることができます。私が参加をしたのは5月のある日、午後3時。グリーンスクールの生徒は放課後のアクティビティを楽しんでいる時間でした。

見学者に配られる竹製のタグ
グリーンスクールの教育プロセスは、生徒の中に持続可能性を理解させることから始まります。その一環として、多くのグリーンテクノロジーを導入しています。
そのひとつが空気中の水分を飲料水に変えることのできる吸湿材、ハイドロパネル。
空気中の水蒸気を、パネル上の吸湿性材料に吸着させることで水分を集めてタンクに貯め、その水にマグネシウムやカルシウムなどを加え、飲料水として完成させる仕組み。
電気を使わず必要なエネルギーをすべて太陽光でまかない、パネルを置くだけで空気から水をつくれるという革新的なものです。
校内の飲料水供給の役割だけではなく、生徒が楽しみながら飲料水がつくられる様子を学ぶための学習ツールとしても役立っています。このことにより、ペットボトルの購入を避けることにも繋がります。
実際にこの学校に足を運んで感じたのは、「やらされる勉強」とは対局の、自主的に取り組むプログラムを行っているという点です。フィンランドの教育メソッドをベースに考案されている授業は、学んだことを毎日の生活の中で実際に適用できるような内容・構成になっているそうです。

未知の世界に興味を持つ子どもの、意欲を伸ばす教育がここにはあります

小学生の娘がよく口にする言葉に「この勉強、将来役に立つ場面あるの?」があります。
苦しみながら解く算数の問題を親や先生から「やりなさい」と渡されると、自分の時間を無駄にしているように感じてしまうそう。その点、この学校は学んだことが実践的だと感じることができる点が、子どものやる気に繋がるのかもしれません。
グリーンスクールの見学は、2015年に続き今回が2回目でしたが、2回とも起業家の親の参加が目につきました。「起業家精神を養う学校」という言葉で表現されることもあり、普段からいろいろなアイデアが頭に浮かんだり、未知の世界に興味を持って一歩を踏み出したいという意欲がある子どもにはとても合う学校だと思います。
実際に「今、世の中に存在していないけど、あったら便利だろうなと思うものについて考える」というテーマのクラスもあるそうです。創作や探究への興味があるのにも関わらず「今通っている学校が退屈」と感じている子どもにとっても、とても刺激のある場ではないでしょうか。
広大な校庭でエクササイズ。野外校舎では親のマリンバ楽団の練習中で、オーガニックなリズムが響き、なんともピースフルな雰囲気。


校内で響くチャイムの代わりに銅鑼(ゴング)がゴ~ンと鳴らされるのだとか。銅鑼の重く深い音色は、心を落ち着ける効果があるそう。
ダイナミックな曲線を描く、竹素材でつくられた体育館。

学校の入口付近に設置されている太陽電池式ATM。巨大な石の上にATMを設置し、竹やリサイクルのアルミニウムで囲み、竹の上に設置されたソーラーパネルから太陽光を取り込んでいます。このATMのアイデアは、インドの農村部などにも提供され、地域社会に大いに役立っているとのこと。農村部では、現金をおろす際に車を運転して(ガソリンを消費して)町まで行かなくてはならない場所も多く、資源の節約に繋がっているとのことです。

学校内のさまざまなものが竹製で、プラスティック製品があまり見当たりません。分別用ゴミ箱も竹製です。竹は強いだけではなく、抗菌作用もあるので、理に適っています。成長も早いので、プロダクトをつくることに適しており、メリットの多い素材です。

黒豚と牛、鶏も育てています。

売店には、リサイクル商品や環境にやさしいボディソープや布製品などの生活用品が、グリーンスクールらしいセレクトで販売されています。

グリーンスクールは、アメリカにある国際教育認定組織「WASC」認定校のインターナショナルスクールです。インターナショナルスクール(外国人学校)の所在地が日本であるか外国であるかにかかわらず、国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI)の認定を受けた教育施設の12年間の課程を修了し、18歳に達していれば大学への入学資格が認められます。※1
実際に、グリーンスクールを卒業している生徒は、意欲的に大学で学び、優良企業に就職している生徒も多いとのことです。
※1 出典:文部科学省 http://www.mext.go.jp
この学校はとても特徴的なので、すべての学生にとって最適な学校ではないかもしれません。便利で都会的なライフスタイルを好む人には、馴染むのが難しい場合もあるかもしれません。
一方で、豊かな自然の中で国際的なカリキュラムを学びたい人や、色々な環境で育った仲間と刺激し合い、助け合いながら家族ぐるみで生活する経験は、一生の宝物だと感じる人もいるでしょう。
日本ではなかなか体験できない学校生活。スクールツアーは日本からも申し込みできます。
感性のアンテナにビビッとくるものがあったら、是非実際に見学してみてください。
グリーンスクール Bali
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